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からだには希望がある

2015年9月21日、国連国際平和デー当日より、ゆる体操は、誰でも指導できるようになりました。
※これを「ゆる体操の全面的オープン化」と呼んでいます。

究極のローコスト・ハイリターン体操“寝ゆる黄金の3点セット”

第7話 「寝ゆる黄金の3点セット」で体幹部がゆるめば、センターが育ってくる

(2015.01.17 公開)

プロのマッサージ師でも不可能に近い
体幹部をゆるめれば、新陳代謝が飛躍的によくなる

 「寝ゆる黄金の3点セット」を実際にやってみて、いかがでしたか?

 「すねプラが気に入った。今日もやっちゃおう」

 結構です、どんどんやってください。

 「膝コゾの途中から眠ったのか、意識がなくなってしまった。ただ気持ちよかったことだけは覚えている。今日も、寝る前にやっちゃうだろうな」

 これも非常に結構です。気持ちよかったなら、やったリターンは確実にあります。ただ気持ちいいだけでなく、あなたのなかに、第6話までに説明したいろいろなリターンが芽生えています。どんどんやってください。

 ところで、あなたはいま、どんな状態でこのサイトの文章を読まれていますか? 最近ではスマホやタブレットを持っている方も多いでしょうから、横になって読まれているかもしれませんね。

 もう寝床に入っていたら、この先を読まず、「寝ゆる黄金の3点セット」をやってください。途中で寝てしまっても、結構です。この先は、明日、適当な時間を見つけて読んでください。

 少しだけセンターの話をします。

 昨日のあなたの感覚を思い出してください。途中で寝てしまったあなたも、最後の「膝コゾ」をやって寝たあなたも、えもいわれぬ気持ちよさのなかから眠りに落ちるとき、身体にどんな感覚が訪れたでしょうか? 思い出してみてください。

 布団やベッドに、身体がズ〜〜ッと沈んでいくような感じ……。敷布団やマットに身体がベト〜ッとまつわりついていくような感じ……。そんな感じがしたと思います。

 なぜそんな感じがしたのでしょう。これこそ、まさにゆる体操の成果であり、狙いでもあるのですが、背骨まわり、とくに固まっていた腰の中心の筋肉がゆるんだ証拠です。

 人間の身体をかなり硬質のものと思っている人もいますが、大きな間違いです。人間の背骨は、椎間板というグニョグニョのコンニャク状の物質で結ばれています。背骨は、いわばチェーン構造です。健康な筋肉も本当はフニャフニャ、フワフワに柔らかいものです。

 人間というものは、本当は、生きているタコのように柔らかい物体です。タコをつかむと、指や腕にまとわりついてきます。ゆるめば、人間も、どんなものにもまとわりつくようになります。

 子どもの頃を思い出してください。夕暮れまでとことん遊んで、とことん疲れて寝た記憶はありませんか? そのときの“寝る感じ”を言葉で表現すると、“トロー”とか“ベトー”とか、布団やベッドに浸り切ってしまう感じ、溶け込んでしまうような感じではなかったでしょうか。

 あなたは、そうとう長い間そうした感じを味わうことはなかったでしょう。昨日の「寝ゆる黄金の3点セット」で眠りに落ちるときの感じは、子どもの頃のそうした記憶を少しだけ呼び覚ましてくれたことと思います。

 キーワードは、“体幹部のゆるみ”です。膝コゾをやった人は、「ふくらはぎが気持ちいい」という思いに浸りながら、ふくらはぎをひざでコゾコゾやりました。背骨や背中の筋肉のことはまったく考えてもいないわけですが、体操のメカニズムによって背骨や背中の筋肉が自然とゆるんでいったのです。それが、体幹部のゆるみです。

 逆にいうと、昨日の夜までのあなたの体幹部は、いかに固まっていたかということです。しかも、コストでいえばゼロコストに近いような方法で、さらに、やっていること自体が気持ちいいものだからついやっちゃうという虫のいい話で、体幹部がゆるんだのです。

 実をいいますと、体幹部の、しかも腰などの中心部はそう簡単にゆるむものではありません。プロのマッサージ師に、「いくらでもお金は出すから、そこまでゆるませてくれ」といっても、不可能です。

 いい状態になるということの一番の基本はゆるむこと——。この事実だけは必ず覚えておいていただきたいと思います。

 「じゃあ、『ゆるむ』ってどういうことですか? 分かりやすく、ひと言で説明してください」

 あなたからこう質問されたとすれば、私は次のように答えます。

 「人間のような生体にとって『ゆるむ』ということは、端的にいえば新陳代謝がよくなることです。水分をベースに、酸素や二酸化炭素のようなものから、栄養素、老廃物までのさまざまな物質が好循環をするようになることです」

 実際に、私たちが日常用語として「ゆるむ」という言葉を使うとき、ある種の意味感覚があります。固まっているものが、水を含んで、ズルズルに溶けてくる……。そうしたことを「ゆるむ」といいます。まさにその「ゆるむ」という言語感覚の一番の中心になる要素を生体に求めるとすると、上記のような内容になります。

 いまあなたにゆる体操をやっていただいていますが、本書を読み進めるとき、実際に体操をするとき、「ゆるむ」という現象それ自体、そしてそれに伴って生ずる「ゆるむ」という気持ちを、ぜひ大切にしていただきたいと思います。

心身のバランスを高めたければ、
センターに「身体意識」でラインを通せ

 ここで大切なことを付け加えておきます。

 頭の片隅に置いていただくと、今夜「寝ゆる黄金の3点セット」をやったときも、あなたが気づかない奥深いところで良い影響があります。

 ここで付け加えたいこと、それは「センター」の話です。

 センターというのは、立った状態で説明すると、地球の中心から人間の身体のなか、背中の直前を背骨に沿って縦に貫き、天まで抜ける垂直線、逆にたどれば自分の真上の天の中心からまっすぐにぶら下がる垂直線のことです。結局、それは人間の身体の重心と、地球の重心を結んだ重心線に沿った延長線になります。

 物理学的にこれは誰にでも存在するわけですが、実は深層心理、潜在意識下のところで、人間はその線に沿って意識のラインを形成するのです。西洋で古来センターといわれ、日本では“正中線”といわれたものがそれです。スポーツの世界などでも“軸”とか“体軸”といわれてきました。

 そのラインが潜在意識下で形成されることによって、まず人間の身体のバランスが格段によくなります。人間の身体である各筋肉や骨のパーツを、その線に沿ってまとわりつくようにコントロールしておけば、バランスが見事に取れるということです。

 センターは、自分の身体のすべてのパーツをどのように位置づければいいか、というガイドラインになるわけです。たとえば、いろいろな形をした物があり、「それをまっすぐ並べてくれ」「できるだけ積み上げて、しかもバランスが取れるようにしてくれ」といわれたときに、中央に線が一本垂直に通っていると非常に楽ですよね。

 その分かりやすい例が、五重の塔です。

 五重の塔の造りの基本形は、中心に、通し柱が一本立っているものです。その後つくられた五重の塔にはもっと巧妙な手立てがあり、通し柱すらない五重の塔もあります。

 建築学上の謎ですが、その造り方は、まずやぐらをつくっておき、やぐらから分銅をぶら下げます。その分銅のまわりに構造物を積み上げていくと、通し柱が不必要になります。この構造だと、地震などでガタガタ揺れても、まわりのパーツ同士がずれ合って衝撃を吸収します。あるとき、天先的な宮大工が、通し柱がなくても構築物が造れることに気づいたのでしょう。

 通し柱のない五重塔を造り上げるとき、中心に分銅をぶら下げた紐があります。センターとは、人間の身体のなかに存在する、まさにその紐のようなものです。

 『五輪書』という書物をご存じでしょうか? 宮本武蔵が記した書籍で、日本人の著者として世界で最も発行部数の多い書籍といわれているものですが、なかに“兵法心持の事(へいほうこころもちのこと)”というところがあります。

 「心を広く直にして、きつくひつぱらず、少しもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中におきて」という一節ですが、武蔵は分銅をぶら下げた紐のようなものが心の中心にも通貫していると述べているのです。

 武蔵は、こうした言い回しでセンターの不在を言い表しているのです。やはり、気がつく人は気がついていたわけです。

 さまざまな研究から、私は、「これは意識である。身体に展開される潜在意識である」と定義しました。そして、“身体に展開される潜在意識”だから、これを「身体意識」と名づけました。身体研究の専門業界では、世界初の“発見”と評される研究成果でした。

身体意識の王者・センターは努力で育てられる。
それは意識だからだ

 私の思考法からいくと、「意識だから、人間の身体のコントロールや精神状態をより良くしようとするとき、有効なものなら、何ヵ所あってもいいじゃないか」となります。つまり、センターのような身体のラインを垂直に貫くラインも身体意識なら、丹田のように、下腹の中心にでき、精神にドッシリした安定感をもたらすものも身体意識です。そう考えていくと、他にもいろいろな意識の存在を発見することになります。

 たとえば、「レーザー」と名づけた意識です。自分の腹の位置から、目標に向かって一直線に伸びるラインです。それがあれば、目標と自分を結びつける力がより強くなり、目標に向かって遂行する貫徹力も強くなります。

 また別の意識が、左右の曲線状に2本、肋骨まわりにもできます。これには「ベスト」と名づけました。このベストというラインが肋骨まわりにできてくると、非常に肩の力が抜け、呼吸も楽になります。

 「肩肘張る」という言葉があるほど、肩はつい固まりがちです。営業の仕事をしたことのある方なら、“肩まわりに力が入って、相手に対する自分の態度が柔軟かつ円滑にならなかった”といった経験の1つや2つは覚えがあるでしょう。先輩の立場であれば、新人に向かって「お前、もう少し肩の力を抜けよ」とアドバイスしたこともあったかもしれません。ベストという身体意識を知らなくても、みなさん、実はベストの効果を分かっているわけです。

 実際の研究から、いろいろな身体意識が見つかってきました。そうした身体意識のなかで一番大事なのはなにかと聞かれれば、まさにそれがセンターなのです。

 英語でも、センターは“中心”です。日本語でも、正中線は“正しい真ん中の線”です。軸や体軸という言葉もなかなか魅力的ですが、センターと正中線という表現は見事に言い当てています。だから、センターはあらゆる身体意識のなかの王者、まさに“中心のなかの中心”といえます。

 そのセンターはどういうふうにすると、より育っていくのでしょうか?

 生まれたとき、いろいろな才能の違いがあるように、やはりセンターにも才能の違いがあります。たとえば、イチローです。2歳の頃のイチローが立っている写真を見たことがあります。わずか2歳でありながら、やはり他の子どもよりセンターが発達しています。非常にくっきりとセンターが感じられる立ち方をしています。

 ご存じのように、イチローは、日米の野球史にとてつもない金字塔を打ち立てました。彼の場合、それがセンターの見事さによって支えられています。卓越したバッティングは当然として、生き方もそうです。颯爽として、自らを失うことがありません。

 イチローを違う言葉で表現すると、“中心がぶれない男”です。中心かぶれないというのはセンターの作用ですが、小さい頃から、強い子は強いということがいえます。

 「センターは先天的なものなのですか? 後天的には育てられないのですか?」

 こんな疑問が起こるでしょうが、後天的な環境や本人の努力、その他いろいろなことによっていくらでも変わります。なぜ変わるかといえば、それは意識だからです。

 でもそうは言っても、潜在意識下の意識、深層心理というものは、比較的変わりにくいものです。“自分でどう思うか”で表面上の意識はいくらでも変えられますが、深層心理はなかなか変えられないものなのです。しかし、「意識である以上、絶対に変えられないということはないだろう」と考え、取り組んでいるうちに、ある種のトレーニングで思うように計画的に変えられることが判明してきたのです。

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